陸上世界競歩チーム選手権の日本代表が23日、開催地のトルコから成田空港に帰国し、今夏のパリオリンピック(五輪)から追加される男女混合競歩リレー(42・195キロ)への収穫を口にした。

日本は今大会で、同種目の五輪出場権を2枠獲得。日本勢トップとなる銀メダルをつかんだ池田向希(25=旭化成)岡田久美子(32=富士通)組が首からメダルを下げ、取材に応じた。池田は「パリ五輪の代表権2枠を目標としていたので、チームジャパンとしてクリアできてよかった」と笑顔を見せ、岡田も「シニアで初めてメダルを獲得することができて、すごくうれしい大会となった」と声を弾ませた。

日本のメダル獲得の可能性が十分にある同種目は、男女1人ずつで構成されるチームが、42・195キロを4区間に分け、男子→女子→男子→女子の順につなぐもの。1度歩き終えると、約40分のインターバルがあり、そこでの過ごし方が鍵を握る。

日本チームは同陸連の科学委員会からのアドバイスや、昨年11月に国内のリレーに出場した高橋和生(27=ADワークスグループ)の助言を踏まえ、インターバル中は体を冷やしたり、体を動かし続けたりして対応。池田は「発汗量が多く、直射日光を浴びている状態だったので、まずは深部体温を下げるように心がけて、体が固まらないようにしていた」と振り返り、岡田も「1本目の後に血糖値が下がってしまうので、すぐにエネルギーを補給して、2本目に備えるようにした。池田君と同様にどんどん体が固まってしまうので、ストレッチやジョギングなどで備えたことがよかった」とうなずいた。

リレー種目ならではの緊張感や重圧も感じ取ったという。岡田は「流れが重要な種目だと感じた。池田君が1位で持ってきたが、世界大会では1番で歩いたことがなかったので、ドキドキとワクワクを感じた」と回顧。チームで計3度の歩形違反となると3分のペナルティーが課されるルールの中、3区で2度の歩形違反となった池田は「レッドカードを2枚受けてしまったが、岡田さんが安定した歩型でまとめていただいたことが銀メダルにつながった」と感謝した。

同種目のパリ五輪代表は、23年9月20日から今年3月の全日本競歩能美大会における男女20キロ競歩や今大会の成績を総合的に勘案し、本大会での活躍が期待できると評価された選手を選出する方針。個人種目の男女20キロ競歩が8月1日に行われ、リレーは同7日に実施される。中5日と厳しい日程ではあるが、個人種目との2種目で選出する可能性もある。

すでに20キロ競歩で代表内定済みの池田は「まだどういう決断になるかは決定していませんが、個人種目から中5日となるのでどれだけ回復できるか。男子は層が厚いので頼れる」とし、同じく20キロ競歩での代表入りが濃厚な岡田も「2種目に出るかどうかは分からない」と話すにとどめた。

同リレーで17位となった高橋和生、渕瀬真寿美(37=建装工業)組、個人種目の男子20キロで4位となった古賀友太(24=大塚製薬)、日本陸連で競歩シニアディレクターを務める今村文男氏らも帰国し、空港内で取材に応じた。

◆高橋和生 「前の国の選手と少しずつ差を縮められて、トータルとして良い歩きができた。計2枚の警告を累積した中で4区の渕瀬さんに渡すことになり、申し訳なさがある。(インターバルの過ごし方を他の選手に助言し)僕の助言が生きたのかは分からないが、参考になってくれたらいいなと思う(笑顔)」

◆渕瀬真寿美 「代表2枠を取ることができてホッとしている。累積はそれぞれ1枚ずつだったのでお互いさまかな(苦笑)。3枚で3分のペナルティーとなってしまうので、いかに警告を受けないかが大事になると思う」

◆古賀友太 「手応えがあった。上位入賞を勝ち取れたのは自信になった。後半にペースが上がる展開で競り勝てた。余裕度や動きの正確性を高めていきたいと思う」

◆今村シニアディレクター 「(リレー種目の代表選考について)個人種目で歩いた選手が中5日で対応できるのかという心配はあるが、チャレンジすることは評価できる。ただ、20キロを歩いた後に、よりスピードが求められるリレーへ対応するという経験はそれほどないので判断は難しい。(代表発表の時期は未定だが)競技運営が示され次第、補欠や不測の事態に対応できるように準備したい」【藤塚大輔】

◆混合リレー 男女1人ずつでチームを組み、4区間に分かれた42・195キロを男→女→男→女の順につなぐ。25チームが出場。各区間の距離は後日発表される。パリ五輪では男女20キロと合わせて2種目が実施。21年東京五輪まで行われた男子50キロは行われない。